切れない闇をなすりて ほの白い雨が降る 素没する名画の羽根をおだやかに招き導く もう何も見えぬ笑やみの中 深く深く沈みたい やまない雨を集めて ほの暗い闇が来る しぐれることも忘れた 真名ざやを閉ざすため もう誰も知らぬ黄泉の国の底 ずっとずっと焼かれたい ああ恋の歌を ああ彼に伝えて ああ遠き風に愛おしき声を聞く 旅の余すがに疲れて垂した おみなみめ美しく強くとかぬ色目 いつか継ぐとたやすくくるめまいて終わるやいなやけつをまくりてきろへ いずこへ薄れた愛しきおのこ 失われたのは花 けしてたがわぬあなたの匂い 偽りの号に泣いて このまま行かないで あの日が落ちてゆく かたくなに迫る邪心の狂笑 あらがいにべもなく けごんの契りを片腹痛しと足下にすれども無駄 ああせめてただ一言「そなた恋しい」と聞かせて 嘘でも偽りでもどうかその傍にいさせて ああ逢瀬重ね重ね凍る心さらに燃え上がる冷めてゆく 立ち込める夏霞 憧れは泡と消ゆる とめどなく流れ落つるは食いの涙 あなたを信じて 野辺に咲く花にさえ哀れ媚を向けように 人でなく畜生の道をただ這いずれば 恋もせぬわ」と あまりと言えば あまりな言葉 肉が垂れる残酷の雨 口縄の獄の中 生きて返さぬ骨も残さぬその罪を喰いて死ね いまさら呼ばないで もうじき楽になる 愛しい人を誤めた あがないの雨が降る やまない雨を集めた たぎつせに身をまかす