きのう ひとを ころしたんだ
きみは そう いっていた
つゆどき ずぶぬれの まんま
へやのまえで ないていた
なつが はじまったばかりというのに
きみは ひどく ふるえていた
そんなはなしで はじまる
あのなつのひの きおくだ

ころしたのは となりのせきの
いつも いじめてくる あいつ
もういやになって かたを つきとばして
うちどころが わるかったんだ
もうここには いられないと おもうし
どっか とおいとこで しんでくるよ
そんなきみに ぼくは いった

それじゃ ぼくも つれてって

さいふを もって ないふを もって
けいたいげーむも かばんに つめて
いらないものは ぜんぶ こわしていこう

あのしゃしんも あのにっきも
いまとなっちゃ もういらないさ
ひとごろしと だめにんげんの
きみとぼくの たびだ

そしてぼくらは にげだした
このせまいせまい このせかいから
かぞくもくらすの やつらも
なにもかも ぜんぶ
すてて きみとふたりで
とおいとおい だれもいないばしょで
ふたりでしのうよ
もうこのせかいに かちなどないよ
ひとごろし なんて そこらじゅう
わいてるじゃんか

きみは なにも わるくないよ
きみは なにも わるくないよ

けっきょく ぼくら だれにも
あいされたことなど なかったんだ
そんないやなきょうつうてんで
ぼくらは かんたんに しんじあってきた
きみのてを にぎったとき かすかな
ふるえも すでに なくなっていて
だれにも しばられないで
ふたり せんろのうえを あるいた

かねを ぬすんで ふたりでにげて
どこにもいける きがしたんだ
いまさら こわいものは
ぼくらには なかったんだ
ひたいのあせも おちためがねも
いまとなっちゃ どうでもいいさ
あぶれものの ちいさな
とうひこうの たびだ

いつか ゆめみた やさしくて
だれにもすかられる しゅじんこうなら
きたなくなった ぼくたちも みすてずに
ちゃんと すくってくれるのかな
そんなゆめなら すてたよ
だってげんじつを みろよ
しあわせの
よんもじ なんて なかった いままでの
じんせいで おもいしんじゃないか
じぶんは なにも わるくねえと
だれもが きっと おもってる

あてもなく さまよう せみのむれに
みずもなくなり ゆれだすしかいに
せまりくるう おにたちのどうごうに
ばかみたいに はしゃぎあい ふときみは
ないふを とった
きみが いままで そばにいたから ここまでこれたんだ
だから もういいよ
もういいよ
しぬのは わたし ひとりでいいよ

そしてきみは くびを きった
まるで なにかの えいがの わんしーんだ
はくちゅうむを みている きがした
きずけば ぼくは つかまって
きみが どこにも みつからなくって
きみだけが どこにも いなくって

そしてときは すぎていった
ただ あつい あつい ひが すぎてった
かぞくもくらすの やつらも
いるのに なぜか きみ
だけは どこにも いない
あのなつのひを おもいだす
ぼくは いまも いまでも うたってる
きみを ずっと さがしているんだ
きみに いいたいことが あるんだ

くがつのおわりに くしゃみして
ろくがつのにおいを くりかえす
きみのえがおは きみのむじゃきさは
あたまのなかを ほうわしている
だれも なにも わるくないよ
きみは なにも わるくはないから
もういいよ なげだしてしまおう

そういってほしかったのだろう？ なあ